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【SS】目が覚めたら…?
第27章 【ファン感謝】白雪姫 ②小人(ナツ)
しーちゃんがくしの意味を知ろうが知るまいが、どうでもいいんだ。
しーちゃんが、サクラから貰ったくしを大事に持って歩いていたということが、サクラに対する怒りと相乗して、僕の精神を崩していった。
僕の知らないところで繋がるふたりに、僕の消えた未来の姿を見た。
ああ、僕はこうやって誰からも必要とされなくなるのか――。
生の執着が生じてしまった僕は、6人の僕達が散った鏡の間に連れてきた。
鏡が映し出すのは、6人の僕が望んだ幸せ。
ひとりではなしえない、僕達ひとりひとりの"男"としての欲。
しーちゃんを花嫁に迎えたかった。
6人の僕が僕に託したその愛情のすべてが反射し合った部屋に、皆がそれぞれしーちゃんを花嫁に迎える儚い夢のために、最後に用意したものを並べて、その思いでしーちゃんを捕えた。
僕が消える最後の日までここで強制的に僕はしーちゃんを抱くつもりだった。彼女を鎖で僕に捕えても、僕は他の男の存在を許したくなかった――。
だけど、ようやく気づいた。
僕のしていることは、罪だ。
自分の気持ちばかり押しつける僕のどこに、純粋な愛など見て貰えるのだろう。相手を思いやれずに抱くこと自体、浅ましい男の欲をぶつけていると等しい。
僕はただ、気持ちを伝えたかっただけなのに――。
散っても泣くまいと思っていた。
最後までしーちゃんに笑顔を向けていたいと。
だけど無理だ。
しーちゃんに対する僕の想いが、しーちゃんを苛ませる暴虐にしか過ぎないと気づいた今となっては、なにもなかったように笑うことはできない――。
涙流すなんて女々しいね。
本当に僕は、男として情けない。
こんなんだから、しーちゃんに愛すら受け入れて貰えないんだ……。
「ナツ……」
しーちゃんの哀れんだ視線を感じる。
「ごめんね、しーちゃん。鎖、外すから。いいよ、もう……君は自由だ」
僕が消えるのは君には関係ない。
消える僕が出来ることは、君を解放してあげること。
君を少しでも早く、君が必要としている男へ託すこと。
それはサクラなのか、ハル兄なのか、君の恋の結末は見届けられないけれど。だけど君の幸せは、7人の僕が一番願うことだから。
だから、誰より幸せになってね。