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【SS】目が覚めたら…?
第27章 【ファン感謝】白雪姫 ②小人(ナツ)
「昔、ハルさんはナツの助命を、ナツはハルさんの助命を王妃に求め、そして王妃がふたりを生かしたのは慈悲でも恩でもなんでもない。
なにより手に入れたかったハルさんの絶対的拒絶に、ハルさんを繋ぎ止め手に入れるためにナツを使った。ナツはそれを知り、ハルさんの足枷になるならと…ある時命を絶ったんだ」
それはそれは、あたしの知らないナツの過去――。
「運良く俺がそれを見つけて、手当をしたんだが間に合わず…。そして俺は王妃に直談判した。もう人外の魔力を頼るしか、方法が残されていなかった」
「人外の魔力……」
そんなものを、お母様は持っていたとは初耳だった。
「王妃は、君の母君は……淫魔という人外のものだと聞いている。父曰く、それは絶対口外してはいけない国の秘密だそうだ」
「淫魔……」
頭の中に、ちらちらと男達と享楽に耽る母の姿が蘇る。
あの浅ましいまでに快楽を貪るのは、人ではないからなのか。
そしてあたしは、その血を引いているというのか……。
「だから、ナツの命を救えるものがあるとすれば、王妃だけだと思った。なにがなんでもナツを生かすために、王妃に俺は取引を持ちかけて、ある条件の下にナツを蘇らせた。
この森は、ナツを生かすために王妃の魔力で作り出された……言わばナツの箱庭。ナツはこの森限定で生を与えられた。だからナツは自ら森から出て行くことはできなかった。出て行くことは、死を意味する。そして死は、一度経験したナツの記憶の中で、恐怖として残っているだろう」
小人のナツ達が、森を出て行く時にブルブルガタガタと震えていたことを思い出す。
「そして、森という魔力はくしという形をとり、有限だった。より長くナツが生きるためには、大人の姿では魔力の消耗が激しいため、7人の小人の姿をとらざるをえなかった」
「そのこと、ハル兄は……」
「知らない。ハルさんはナツがあの姿になったのは「呪い」のせいだと信じて、その解決策に奔走していたんだ。……言えやしない。あの弟想いのハルさんに、あなたの自由を願うためにナツが死んだ、などとは……」
あたしの中のハル兄は、本当にナツ思いだった。小人姿でのはしゃぎようからも、ナツに注がれていた愛情はかなりのものだったのだろう。