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【SS】目が覚めたら…?
第27章 【ファン感謝】白雪姫 ②小人(ナツ)
「あのくしは、この森を生かし続ける王妃の魔力の象徴。あれが損じたら森は枯れて、ナツが死んでしまう……。俺はあのくしを王妃から盗みだし、ナツに渡した。魔力の対象者であるナツだけが、あのくしを傷つけられない。だからナツが持つのが一番安全だと。だけどナツは笑って俺に返した」
――サクラが持っていて。もしもの時は、サクラがそのくしを折って、僕を止めて。
「ナツがなにを想定していたかわからないが、狡猾な王妃の魔力がそのままおとなしくナツの身体に注ぎ込まれてはいないと思っていたんだろう。
だから俺があんたにくしを渡したことを知った時、ナツは俺が渡すほどの事態の到来を憂えて、くしを折ったんだろうと思う。勿論、誤解からくる衝動があったのは否めないだろうが。
だけどその時にはもう、覚悟していたんだな。大人の姿になったときの命は、3日だと…ナツは知っていたのだから」
「3日……!? 知らない……聞いていないよ、そんなこと!!」
ナツが3日から生きられないから、だからナツは我武者羅にあたしの身体に愛を刻んだ。あたしはそれを知らず、ナツの心を求めて……。
「あんたを愛すればこそ、言えなかったんだろうよ。死に行く者の願望は、生者の足枷になることがある。ナツはあんたの幸せを願うゆえに、あんたに知らせずにひとり逝こうとしていたんだ」
「そんな……。ナツが死んでしまうのなら、あたし小人の姿のナツとずっと一緒でもよかった!!」
「小人の姿であろうとあんたは"ナツ"という男を愛したんだ。だからこそ、ナツは子供ではなく男の姿で、あんたを愛したかったのだろう。あんたは、ナツに死を覚悟させるほど、愛されていたんだよ……」
――愛してるよ、しーちゃん。
ナツが刻み込んだ愛の証。言葉も愛撫もそれら全て、限られた時間をあたしのために使い尽くそうとしていたのか。
あたしは、そこまで愛されていたのか――。
涙がぼたぼた床に落ちる。
ナツの愛情が、痛む心に染みてくる。
ナツ、ナツ、ナツ――。