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【SS】目が覚めたら…?
第27章 【ファン感謝】白雪姫 ②小人(ナツ)
「ねぇ、なんであなたは、あたしにくしを渡したの? あたしにナツを殺させたかったの?」
あたしの問いかけに、サクラは儚げに笑う。
「そんなわけないじゃないか。ナツは俺の真実の友だ。ナツを笑顔で生きさせたいために、俺は……」
サクラは眼鏡の奥の目を細め、遠くを見つめて寂しげな翳りを見せた。
「……俺のことはいい。あのくしをあんたに渡したのは、もしもナツが怖れている"暴走"の時が来たら、俺が盾になりたかったからだ。俺がいなくなってもあんたならば、絶対このくしを大切にしてくれると思ったから。
だけどナツは死への抵抗という暴走ではなく、あんたの愛ゆえに殉じる道を既に選び取っていたようだ。つまり俺がしたことは、あいつの純愛に水を差すものだと……ずっと俺は自省していたんだ、あそこで」
ナツが思っている以上に、サクラはナツを大事にしているのだろう。
だからこそナツは、あたしとサクラがどうこうというありえないことを懸念して、あたしだけではなくサクラまで離れていきそうな焦燥感に、荒れてしまったのだろう。
サクラは硝子の棺の中のナツを見た。
「くしが折れてもまだ森は完全には枯れない。そしてナツが生きているような姿でいるのはなぜなのかはわからない。まるでなにかの力で守られているようにも思えるが……。
それに望みをかけるのならば、統合されたナツへの魔力が消えるあと半日に、それを勝る魔力をナツにぶつけて相殺させれば、ナツは目覚めるかもしれない……」
「どうすればいいの?」
方法があるのなら。
ナツがまた生きて笑っていられる方法があるのなら。
あたしは、命を捨ててもいい。