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【SS】目が覚めたら…?
第27章 【ファン感謝】白雪姫 ②小人(ナツ)
「おおっと、逃げんじゃねぇぞ、バアサマ。なんのためにナツが鏡を通して、ナツの状況をお前に見せていたと思うんだ? ただの可愛い変態さんじゃないんだよ、俺様の弟は」
かちゃりと、銃口を向けて猟師が言う。
「お前を守る城という結界がなければ、お前は俺が簡単に仕留められる獲物なんだ」
そしてその鋭い切れ長の目を、林檎に向けた。
「白雪…シズを仕留め損なう俺様の暗躍で、"ナツにかけられた魔力を吸い取って強くなったらしい白雪が、王妃を殺して王座を狙っている"というまことしやかな噂に怯え、自らの魔力を用いて、魔力の使い手となった白雪の視察を兼ねて退治に現れるだろうことは予想済み。
で、お前の最強の武器が林檎か? ナツの魔力を吸い取るほどの相手に、随分とちゃっちい武器だなあ、おい」
老女は慌てて、果物籠を抱いて小屋から逃げようとする。
だが後ろに立ったのは、黒髪の眼鏡をした男。
「あなたは急いだのでしょうが、私達は随分とお待ちましたよ、王妃様。ご自分に代わって、永遠の美を鏡に映し出すあのひとを許せないと、憎しみという名のすべての魔力を込めて作られたこの林檎、確かに頂きます」
「それをどうするつもり……もしやあの男を蘇らせる気か? 無理だ無理無理、成体を維持するにはまだまだ魔力が足りぬわ!!」
黒い帽子をとって現れたのは――老醜をさらした、かつての絶世の美女。
「6人のナツ達が、あのひとを追いつめるあなたを封じる力となるために、わざとあの鏡の中に命を注ぎ込んだ。そして最後の……7人目のナツが、その鏡をあなたに繋げて、あなたに見せることであなたから美しさを奪っていった。どうですか、覗き見をして老けたご気分は」
猟師が超然と、そして怒りが籠もった眼差しを老婆に向けた。
「お前には色々と聞きてぇことはあるけれど、まずは――。
『鏡よ、鏡。世界で一番美しいのは誰?』
不遜な問いかけに答えたのは、老婆の背後にいる黒髪の男。
「『それは、そこにいる……心根まで醜い老婆のことではありません。
美しい白雪姫を殺しても、もはや永遠に、この方は"美しい女"とは呼ばれることはないでしょう――』」
「嫌あああああああああ」
美しさに拘った女の、断末魔のような絶望の悲鳴があがった――。