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【SS】目が覚めたら…?
第27章 【ファン感謝】白雪姫 ②小人(ナツ)
同じ刻――。
「ナツ、あのね。あたし……フユのお洋服作ってみたの。可愛いでしょう?」
硝子の棺の中に、まるで眠り姫のように眠る白皙の王子に向かって、笑顔で声をかけているのは、美しい少女。
彼女の腹に膨らみはない。
そこに子が宿っている証はまるでないのだが、彼女にはそれがこの王子からの"贈り物"であるという確証があった。
彼女は愛おしげに、平らな腹をさする。
「ふふふ、ねぇ、フユ。あなたのお父さん、とってもとっても可愛い小人さん達だったのよ。あたしのこと、"しーちゃん"って可愛く呼んでくれてね、ふふふ、その中にはちょっととろくさいお父さんもいたけれど、それはそれでとっても可愛くて…。フユちゃんは、お父さん似だったらいいわね…」
微動だにしない、棺の中の男。
少女の目からぽたぽた涙が零れた。
「早く、目覚めて……ナツ。今、ナツが大好きなお兄さんと親友が、頑張ってくれているから。だから……」
「シズ――っ!!」
ふたりしかいない鏡の間に、突如押し入ったのは猟師と黒髪の男。
「シズ、この林檎をナツに食わせろ!!」
猟師が手にしているのは、血のように赤い林檎。
見るからに、怪しいものであることは明らかで。
手渡されたその林檎を、男の口元に持っていこうとして、ふと躊躇った少女は、その林檎を自らの口に含んだ。
「シズ!?」
「シズルさん!?」
「もしもの時は、あたしはナツと逝きます」
少し苦しげな顔で笑う少女の顔は、愛おしい男との愛に生きようとする女のもので。