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【SS】目が覚めたら…?
第27章 【ファン感謝】白雪姫 ②小人(ナツ)
「……お前は、本当にナツが好きなんだな……」
その覚悟を見た猟師が思わず呟き、寂しげながらも嬉しそうな表情を見せる。その手がなにかを耐えるように小刻みに震撼しているのは、隣にいる黒髪の男しか気づかない。
「ええ。死ぬ時は一緒よ」
「お前の頑固さは知っている。なにせ、この俺様よりもナツの花嫁になると断言した女だからな」
「ふふふ……」
なにか言いたげな……やるせなさそうな顔で見つめる猟師を見て見ぬふりをして、少女は棺の縁に腰をかけ、咀嚼した林檎を愛おしい男の口元に注ぎ込む。
ひんやりとした男の唇。
それが哀しくて思わず爆ぜたように、深いキスをした時――。
突然彼女のお腹の中から光が放たれた。光は周囲の鏡に次々に反射し、彼女諸共棺を取り囲む。まるでふたりを護るかのように。
誰もが目映い光に目を細めたその中、歌声が聞こえてきた。
「ハ○ホーハイ○ー、しーちゃんが好き」
色取り取りの三角帽子と揃いの服を着た、6人の小人達。
誰も彼もが同じ可愛い顔をしていた。
6人は両手を繋いで円を作り、歌に合わせて小さな足を上げて、首を傾げたりふっくらとしたお尻を振りながら、陽気に歌い続ける。
「きゃはははは。ほら、いつまで寝ているんだよ、クロ」
「もう、約束したじゃないか。しーちゃんを悲しませないって」
「まだまだしーちゃんに夜伽のお仕事、教えてないでしょ」
「くふふふ。ねえねえ、あれ……ぽっかーんとしてるの、大好きなお兄ちゃんじゃない? 手を振っちゃおうかな」
「駄目だよ、今の僕達の登場は、お兄ちゃんやサクラや、しーちゃんと遊ぶコトじゃなく、クロを目覚めさせることなんだから」
「そういいながら、手を振るなよ。うふふふ、大好きなひとが近くにいるのって幸せだね」
「「「「「「クロ、起きて」」」」」」
各々が纏うその色が、混ざり混ざって黒色となり、棺に横たわる男の身体に吸い込まれていく。
「ハ○ホーハイ○ー、しーちゃんが好き」
消え行く歌声。
消え行く笑顔。
そして――。
「ん……」
目覚める、大人の身体を持つ7人目の小人は。
唇に少女の唇を感じて、目を瞬かせた。