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【SS】目が覚めたら…?
第28章 【ファン感謝】白雪姫 ③王子(モモ)
「ねぇ、あたしに"迎えに来るから、待っていて"と言ったのも、あなた?」
思わず息が弾んで、笑顔になった。
もしかして。もしかして、この男があたしの待ち人?
あたしを自由にしてくれる、あたしの"希望"の男?
「あたし、ずっと待っていたの!!」
途端、びくりと男の身体が震えた直後、男の顔が辛そうに歪まれ、眉間に皺を刻んでその目が伏せられた。細やかに震撼する長い睫毛が視界に入る。
そしてゆっくりと開けられたその目は――、
「いいえ、俺は姫とは今初めて会いました」
何も映すことがない暗闇に澱んでいるように思えた。
そのくせそれまでに見せた辛苦の表情を見事に払拭し、無表情の仮面をつけた顔がそこにあった。
あたしから、幾許かの懐かしむ心を即座に否定した彼は、あたしが与えた「拒絶」というものを逆にあたしに与えてくる。…鏡の反射のように。
胸にきりきりと痛みを感じる。
期待を砕かれたことがショックだったのか、あたしの待ち人はまだ現れないという現実がショックだったのか……。
ひんやりとした風が、興奮に上気していたあたしの頬を撫で、体内の温度まで下げていく。
音もない静寂な情景の中、ひんやりとした寒さだけがすべての感覚。
寒いと感じるのは、風のせいだけではないのかもしれない。視線を外せられないこの男の、凍りついたような無表情さから放たれる冷気のせいもあるのかもしれない。