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【SS】目が覚めたら…?
第28章 【ファン感謝】白雪姫 ③王子(モモ)
「それに、なにを心配なされているんでしょうね。まさか俺が、姫を襲うとでも? 大丈夫です、俺にも好みというものがありますから」
くすくすとした笑い声に、自意識過剰と指摘されたあたしは、自惚れた羞恥に顔がぼっと沸騰するのを感じた。
「ただ、お望みなら、その斜め上を向いて尖ったままの唇、奪って差し上げますが?」
「……望んでいません!!」
声調が知らず知らずと荒くなる。
「おや? だったらなんでお顔が赤いんでしょう? また期待されているのかと」
意地悪だ。この男、意地悪な奴なんだ!!
ああ、それよりもう首が限界……。
「ねぇ、我が姫君?」
途端に甘くなったその声音にぞくぞくとしたものを腰に感じたあたしは、潤んだ目を真っ正面からサクラに向け、姫あるまじき……あかんべをして、鬱憤を晴らした。
「あははははは、これはこれは。仲良く出来そうですね」
「どこが!!」
不可解な問答だけではなく、その意地悪な物言いでもあたしを翻弄させるのがうまいこの美貌の男――。
「ならばもっと会話でわかりあいましょうか。中々に姫は、いたぶられるのがお好きと見える。お望みなら、夜通し……」
冗談じゃない!!
「あ~、わかったわ。わかったわよ。おいしいお料理じゃないと許さないわよ!! あたしに指一本触れないでよ、ちゃんと節度を保つこと、わかった!? それにあたしはいたぶられるのが好きじゃないわ、された分はそれ以上できっちり返すから。覚えておきなさいよ!!」
悔しい悔しい悔しい!!
「……御意」
笑いを堪えているような声音が、ますますあたしの苛立ちを募らせた。
斜め上を向き、つんとしたまま固まることで始まった、正体不明なの男との共同生活。
無防備な笑顔であたしを破壊的に魅惑してくる、この意地悪な男との縁も、城を出る"時"が到来するまでだと、あたしは自分に言い聞かせた。
……いつのまにか、追手に対する不安もこの男に対する恐怖心はなくなっていた上に、今まで諦観の内に押し込めていた素の自分が、抑圧していた素直な感情が、少しずつ蘇っていたことに気づかずに。