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【SS】目が覚めたら…?
第28章 【ファン感謝】白雪姫 ③王子(モモ)
それでもやはり我慢は限界に来て、サクラが作り出した一定距離をずんずんと踏み越えて、ひと言でも言い返そうと躍起になる。
それなのに、あたしがムキになればなるほど、ふふんと笑いながら後退し、縮めた距離をまた拡げ……それがほぼ同じくらいの距離にてぴたりと止まる。その距離を保てるだけの余裕さ見せつけられたのが癪で、その距離を崩そうと追いかける。
ああ、これならばまるであたしがサクラの傍にいたいと追いかけ回しているみたいじゃないか。
そう思い、睨みつけるだけで終えて、追いかけるのを断念するのだが、
――おや、随分とあきらめの早い方ですね。
今まで諦めきって城にいたくせに、そう挑発されると条件反射的に、好戦的に反応してしまう自分の身体が恨めしい。
昔のあたしは、こんな勝気な女の子だったことを思い出し、つくづく自分の"素"が嫌になってくる。
それに嘆いてため息つけば、どこからか響いてくる…くくくと笑い声。
テラスの壁に、腕を組んで背をもたらせた、穏やかな顔のサクラがこちらを見つめていて、だけど一定距離を踏み越えるとサクラはその柔らかさを消して、意地悪な仮面をつけるんだ。
信じろといったのはサクラなのに、彼はあたしに踏み込ませないように身を守っている。
それがなんとなくわかりはじめた時、あたしはそうしたサクラの自制を壊してやろうと企んだ。
あたしを女と意識していないことが腹立たしい。
余裕ぶってあたしを振り回すところが腹立たしい。
表情を崩さないのが腹立たしい。
あたしを何も出来ない小娘と思っていることが腹立たしい。