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【SS】目が覚めたら…?
第28章 【ファン感謝】白雪姫 ③王子(モモ)
さらさらと風に靡く髪の音が、やけに大きく耳に響く。
絡み合みあったままの視線が外せない。
呼吸が、自然と浅く不規則になってくる。
汗ばんでくる、サクラの腕を掴んでいるあたしの手。この手をどうしていいのかわからない。サクラを突き飛ばしたら良いのか、視線を隔てる壁にすればいいのか。
だけど、この手で……サクラの顔に触れてみたい気がした。
サクラに……触れてみたい。
「……っ」
言葉もないまま、あたしの震える手がサクラの頬に触れると、サクラはびくりとして怯んだような目をした。
だが――
「っ……」
静かに、あたしの手の上に……、自分の手を重ねた。
今度はあたしがびくりとして、攣ったような呼吸を繰り返すと、サクラはなにも言わずあたしを見つめたまま、重ねた手の指を絡めてきた。
息が……詰まる。
小刻みに震撼する長い睫毛に縁取られた、切れ長の目。
なにかを訴えるような切実な目で、痛いほどまっすぐにあたしを見て、あたしは……眩暈を感じた。
強い吸引力を持つ黒い瞳から、目を離せられない。
サクラの黒に囚われていく――。
呼吸が出来ない喉の奥がひりついた。
サクラの瞳は次第に熱を孕み、発火する直前の湯気のようにゆらゆらと揺らめきながら、しっとりと濡れてきて。あたしの胸と下腹部の奥を直撃するように、どくんどくんと脈打たせてくるんだ。
ああ……、息が苦しい――。
少しでも酸素を取り込もうと、唇を僅かにあけた瞬間、サクラの目が辛そうにぎゅっと細められていき、同じようにその唇が開いていく。
サクラの熱い息が、そこからやるせないため息のように吐き出されたのを、あたしの唇が感じて、思わず全身が甘く疼いた。
ああ、なにこの……もどかしい感じは。
身体が火照る。身体がじんじんと疼く――。
サクラに――触れたい。
サクラに――触れられたい。
サクラが欲しいと、切に思った。