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【SS】目が覚めたら…?
第28章 【ファン感謝】白雪姫 ③王子(モモ)
「姫……」
絞り出すように掠れた声。
ドキドキと心臓がうるさい。
「俺……」
サクラが伏せ目がちに顔を傾けて、ゆっくりと距離を縮めて来た――その時。
バサバサバサバサ……。
凄まじい羽ばたきの音と、なにか肌を擦るような衝撃が、あたしとサクラの間を割った。
「なに、これ!!」
それは鷹。野性的な鋭く険しい目をした大きな鷹が、サクラの肩にとまり、バサバサと羽を広げては、あたしを威嚇するようにして遠ざけている。
「……ナツ」
サクラが零したその名前に、鷹は喜んだようにまた大きく羽を広げた。
「……そうだな」
なにやらサクラは悟ったように、寂しげな笑いを浮かべると、あたしを見た。
そこには、直前までのあたしの身を焦がしそうな熱の影はなにもなく、いつもの冷ややかな意地悪い表情があるだけ。
そして――。
「早くその涙で不細工になっている顔を洗ってきて、少しでもマシにしてきて下さい。その顔でいられる方が耐えられない。な、ナツ」
鷹が呼応したように羽を広げた。
くぅ――っ。
鷹までバカにして!!
「わかったわよ、綺麗にしてきます!!」
サクラを背にしながら、内心あたしはほっとした。
あたしはサクラになにを考えたんだろう。
あたしは確かに、サクラが欲しいと思った。
欲情した。
その事実が城でのお母様を思い出させた。
狂宴に耽っていたお母様――。
何人もの若い男がお母様に覆い被さっていた場面を見たことがある。
あの淫乱の血があたしにも流れているというのか。
素性がわからぬ男に、欲情するなんて。
サクラにバカにされたよりも、鷹にバカにされたよりも。
お母様にバカにされたような気がして、哀しくて……涙が零れた。