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【SS】目が覚めたら…?
第3章 Ⅱ.ナツと……
 


 弓道場を出たあたし達。

 新年早々繋がれる場所を、必死の思いで思案する。


 なにやっているんだろう。

 まるで盛ったおサルさんみたい。


 そう思えども、それでもどうしても人としての欲が理性に勝る。

 それはきっとナツの艶香に参っているせいだ。


 美しいナツ。

 可愛いナツ。


 それ以上に魅惑されるのは、ナツの心が放つ熱さ。

 ナツの熱に包まれたいと願うあたしがいる。


「しーちゃん、初詣でここらへんの人波は引かないし、ひとまず神社から出た方が……」


 初詣にきたのにお参りせず、繋がれる場所を優先させるのは、なんて罰当たり。そう思えど、火照ったままの体は……切実で。


「……佐伯、くん?」


 あたしの手を引き、今にも帰ろうとしていたナツに声をかけたのは……白衣に袴を着た初老の男性だった。


「神主さんっ!!」


 ナツが嬉々たる声を向けたのは、この神社の神主らしい。


 あたしが記憶する神主さんは、もっとよぼよぼのお爺ちゃんだったから、代替わりでもしたのかもしれない。人なつっこいような目許があたしが記憶する神主さんと似ている気がする。


「あけましておめでとう、佐伯くん。今年もまた……例の願掛けにきたのかい?」

「願掛け?」


 あたしは首を傾げてナツに聞いてみる。

 するとナツは照れたように笑った。


「うん……。しーちゃんが早く目覚めますようにって、正月は必ず。あとは月に一回はお参りにきて、絵馬を書いたり……」

「ふふふ、佐伯くんは小さい頃から本当に熱心に拝んでいくから、死んだ私の父とどうしてもその願いを叶えてやりたいなって……おっと、いいのかな。こんな可愛いお嬢さんにこんなことを話してて。佐伯くんが初めて神社に連れてきた女の子を前に……ん? "しーちゃん"……ねぇもしや……」


 ナツは満面の笑みを神主さんに向けた。


「はい。願いが叶いました。このひとが……僕がずっと目覚めて欲しくてたまらなかった、僕の愛しい女性です」


 きっぱりと。

 そう断言するナツに、胸がきゅんきゅんした。

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