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【SS】目が覚めたら…?
第28章 【ファン感謝】白雪姫 ③王子(モモ)

いつもは、クローゼットに用意されているドレスを適当に着ていたけれど、今日は可愛いと思えるドレスと選び、それに似合うような下着を揃え、鏡の前で何度も身だしなみを整える。
黒髪を念入りにブラッシングをして、少しだけ……、今まで使ったことのない紅を唇に引いてみると、それだけで綺麗になったような気がして嬉しかった。
サクラはなんて言うかな。
可愛いとか綺麗とか言われたら、悶絶して倒れそうな気がする……。
部屋を出てから呼吸を整え、食事が並ぶ卓を振り返る。
「おは……あれ?」
食事はあるのに、サクラの影はない。
キッチンにもいない。
「あたしだけの食事? サクラは?」
どこにもいない。
あたしを守ると威張り腐っていたサクラが、勝手に出かけるわけはない。
きっとどこかにいるはずだと探しに行こうとしたあたしから、空腹を知らせる腹の虫が鳴り響いた。
「……このままサクラを見つけても、くぅくぅお腹鳴らしたままなら、笑われてしまうわ。先に食べよう」
……サクラの前では、恥ずかしい女の子ではいたくない――。
昨日までのあたしとは違うあたしが、羞恥に顔を赤らめた。
そして食事が終わり、サクラを探索してみれば、サクラは薔薇園のブランコに座っていた。
あのブランコは、よくモモちゃんと遊んでいたものだ。
そこに姿を見つければ、一層胸がときめく。
なんだろうこの甘酸っぱい感じ。
だけど、どんな顔をして会えばいいのだろう。
いまさらの問題にぶちあたる。
お互いの恥ずかしい部分を触りあっこして、そしてあたしはあまりの気持ちよさに弾け飛んだんだ……。
少しもじもじしたが、それ以上にサクラの声を聞きたい欲求の方が勝り、後ろ姿に声をかけた。
「お、おはよう……」
上擦ってしまった声。
挨拶だけなのにどうしてこんなに体温が上がるのだろう。
火照る頬を手で押えた時、サクラが立ち上がり振り返る。
「おはようございます、姫」
そこには期待していた、とびきりの笑顔もなく。
いつも通りの、なにも変らないサクラの姿があった。

