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【SS】目が覚めたら…?
第3章 Ⅱ.ナツと……
 

 ぽろぽろと涙が零れてしまう。

 
 変わらないものに目を背け、変わるものに目を奪われた愚かなあたし。

 変わらず受け継がれていたナツの心が、心にずどんと突き刺さる。


――しーし。しーし!!



「もぅ、なんで泣くのさ、しーちゃん」

「そういうナツこそ」


 出会いはただのお隣さん。

 あたしの恋路に呪の念を送り続けた、ハナタレおでぶの泣き虫ストーカーのナツは、今もあたしの傍にいてくれる。

 奇跡を起こしてなおも――。


 ありがとう。

 感謝だけでは言い表すことができないこの熱い気持ち。


 それは間違いなく、熱を帯びた感情――。


 ああ、熱いよナツ。

 体だけではなく、心が――。
 


「ここは床暖房なんてものをつけていてね、どうやら部屋が暖まってきたようだ。本当は佐伯くんが願掛けにきたら、ここにお招きして……私が直接に佐伯くんの祈祷をしようと、仮祭壇まで作って待機していたのだけれど……取り越し苦労だったね。

ここは見つけにくい場所だし声も届きにくい。佐伯くんの苦労話でも聞きながら、長居をしていってね」


 優しい神主さんは微笑んだ。



「愛する静流さんに、風邪をひかせるんじゃないよ、佐伯くん。外にお茶とお菓子を用意しておくけど、声はかけないから……温かい内に気づいてね。

それから。帰りは拝殿でお参りしていくように。そしてピンクのお守りを買うといい。なんていってもここは……縁結びで昔から有名な神社。ここの神様が見守る参拝とお守り効果は、絶大だよ?」


 神主さんは、しっかり営業しながら笑って出て行った。


「知らなかった。この神社……恋愛に強い神社だったのか…」

「僕は知ってたよ。だからここに来ていたんだから」


 窓からは拝殿の横が見え、参拝者が手を合わせる姿が見え、どこからか神楽舞いの音楽も聞こえてくる。

 参拝客のどれほどが、この神社の神様の恩恵にあずかれるのだろう。

 願わくば、ナツの願いが現実に形となったような、そんな奇跡が起こるといいな……。
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