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【SS】目が覚めたら…?
第28章 【ファン感謝】白雪姫 ③王子(モモ)
 
――誰かが、白薔薇を千切って。誰かが、ドレスを捲って。誰かがはぁはぁ気持ち悪い息をしながら、お腹の下に……。

 俺は黙したまま……震える姫を抱きしめた。

 昔、俺の母が俺をあやしてくれたように、背中をぽんぽんと叩きながら、身体を揺らして。


――大丈夫です、これは夢。怖いことはなにもありません。

――怖いよぅ、モモちゃん…。なんでモモちゃん、早く来てくれなかったの!? モモちゃんがいないから、だからあたし、怖い目にあった!!


 姫がぽかぽかと俺の背中を叩く。


――ふぇぇぇん。"白雪"も死んじゃった…。死んじゃった…。

――死んでません、ちゃんと生きてます。俺が死なせません!!

――でも、死んじゃっているじゃないの!!


 それは、花弁が散った無残な薔薇の姿。

 そこに、未来の姫の姿とだぶらせてしまった俺は、思いきり頭を横に振ってその不吉な未来を吹き飛ばしながらも、今姫が騒いだ時に、薔薇の棘に傷ついたらしい手の甲の切傷を見て、顔を曇らせた。


――姫。俺は……魔法が使えるんです。


 心に母の言葉が蘇る。


"いい、モモ。その力は、絶対ひとに見せてはいけないわ"


――魔法?

――そうです。さあ、見てて下さい。この花弁が落ちた薔薇の花、俺の手の中に入れて、呪文を唱えると……。

――うわあああああ!! 薔薇が咲いたああああ!!


"他人の怪我を自らの身に移し、代償にお前が疵を負ったとして。その身代わりを喜ぶ人達なんてこの世にはいない。いるのは、怪我を治したということで恐れおののく人間達だけよ"


――シズル姫、白薔薇が生き返りました。だから笑って下さい。

――凄い、なんで、なんでぇぇぇ!?

――あなたが笑顔になるのなら、俺はどんなことでもします。


 俺は、綺麗になった姫の手の甲を見つめながら、逆に疵を負った俺の手の甲を姫の目から隠し続けた。
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