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【SS】目が覚めたら…?
第28章 【ファン感謝】白雪姫 ③王子(モモ)

俺は、他人の疵を治すことができる。だがその代償に、俺の身体が傷つく。今までどんなに善意で疵を身代わりにして治しても、感謝されることはなかった。だから他人というものに興味を見せないようにして、生きてきたんだ。喜怒哀楽があれば、どんな善意も悪意で返るのを知っているから。
だから俺の世界は母だけだった。
母がいない後、大公にもこの力のことは言えなかった。
尊敬するハルさんにも、親友のナツにも。
……姫が相手なら、尚更言えるはずがない。
姫に嫌われたくないから。
こうして白薔薇を見る姫の顔が、笑顔であってほしいから。
白薔薇は俺だ。
愛されたいと願う俺。
白薔薇は枯れさせない。
……密やかに、袂にもう一輪忍ばせ、それを素早く取り替えたことによって、白薔薇が生き返ったように見える……、そうこれは手品という魔法。
俺には、白薔薇を生き返らせるだけの奇跡は生めない。
それでも姫が笑ってくれるのなら――。
――モモちゃんは、白薔薇を守ってくれる?
――はい。
――あたしの傍で、こうして守ってくれる? 約束できる?
――約束、です。あなたが望むまでは、ずっとお傍にいますから。
もう必要ないと言われたその時は、きっと俺はこの世にいない。
だけどこうして、薔薇園に行こうと、薔薇を守ってとあなたが俺に言うのなら、俺は姫の笑顔も薔薇も護り続けたい。
――うわあああ、モモちゃん大好きっ!!
俺の方が好きでたまらない。
苦しくなるほど、あなただけを見つめている。
……我が愛しの姫――。

