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【SS】目が覚めたら…?
第28章 【ファン感謝】白雪姫 ③王子(モモ)

そんな中で、危殆を孕んでいた上辺だけの平穏が、真相を露呈していく。
求婚の許しを乞い続けるハルさんの断固とした拒絶だけではなく、俺と姫との縁談も御破算となったんだ。
大公の言葉も耳に貸さず、国王は血走った目をして苛立ったように怒鳴ることが多くなった。姫は怖がって国王に懐こうとしないのも一因なのか。
そんな中で起きたんだ。
ハルさんが、国王の両目を剣で刺してしまう事件が。
それは宴が設けられた日の夜、姫の眠る寝室でおきた。
命ある国王は怒り狂って叫び、ハルさんは弁解ひとつせず黙したまま。
俺は見たんだ。
寝台の上で、はだけた格好でいる姫に……、
――すまない、今まで気づいてやれなくて。
悔し涙を流しているハルさんを。
ハルさんは、求婚が許可されない腹いせに国王を殺そうとしたのだという結論にまとまりつつあり、誰も俺の言葉など、ナツの言葉など耳を貸さない。兄弟の父であり、国王の親友の言葉も通じない。
なぜハルさんがそんな暴挙にでたのか俺にはわかった。
ハルさんは見たのだろう、実の娘に盛る父の姿を。
そしてハルさんは、姫を救うために闘ったんだ。
国王だとわかっていながら剣を握り、そして俺は国王だとわかっているから偽りの言葉で追い払い。
どこまでも、ハルさんは勇ましい。
どこまでも俺は、保身ばかりで。
国王が怒りまくっても、言えばいいんだ。
破廉恥な国王の正体を。
だがハルさんは、姫のために口を噤んだ。
目を潰された国王の怒りを、買ったんだ。
そんな時に、家族の処刑を提言したのが大公で。
怒り心頭の国王は、大公の声だけを耳にして、それに賛同した。
大公は、俺との縁談が消えてしまったために、今以上の権力を望めぬから、この国を捨て、代わりに隣国の王になろうとしていたんだ。
その息子である俺は、ハルさんから第一王子の身分を奪い取った。

