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【SS】目が覚めたら…?
第28章 【ファン感謝】白雪姫 ③王子(モモ)

確かに俺は、ハルさんになりたかった。
だけどハルさんからすべてを奪いたかったわけではない。
奪えないからこそ、苦しかったんだ。
だがハルさんは、俺がその王位を継承する身分になったことに、黙って頷くだけだった。……ナツも。
おかしい。
絶対これはおかしい。
そう泣きながら訴える俺の言葉に、顔を向ける者はおらず。
そして俺は見たんだ。
王の失明の事態に初めて姿を現わした王妃が、歪んだ笑いをしていることに。遠目なのに、はっきりとわかったんだ。あの歪み方は嘲り。
……嘲笑が向けられているのは、ハルさん? それとも、国王?
もしかして。
もしかして、近親相姦の事実を王妃は知っていて、こういう事態を目論んでいたのではないか…。
淫魔の周りは禁忌に走るという大公の言葉を思い出す。
彼女の力なのだろうか、普通ならありえない…、"禁忌"の事態が立て続けにおきているのは。
国王が夢中になるほどに綺麗……なのか、このひとは。
姫の母親ならもっと清楚で貞淑ではないかと勝手に想起していたが、これではまるで娼婦なみに、厚塗りが凄い女にしか見えないけれど……。
じっと見つめていたのに、王妃は気づいた。
その毒々しいまでに赤い唇が動いた。
"お前、なにものだ?"
そんなの、俺が聞きたい。
"お前も淫魔か?"
続けられたその唇に、俺は多分思いきり不愉快そうにしたのだろう。
王妃は突然高笑いをし始めた。
まるでこれからは、自分の御代とでもいうように、開放感あふれた清々しい笑いを。
そこから……不幸は始まったんだ。

