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【SS】目が覚めたら…?
第28章 【ファン感謝】白雪姫 ③王子(モモ)
 
 
 サクラはいつも、お母様を抱いているんだ。

 だからあたしを抱けないんだ。

 ……お母様を愛しているから。

 だからあたしは拒まれていたんだ……。


「ふぇ……っ」


 苦しいよ。

 ねぇ、心が苦しくてたまらないよ。


 目を瞑ればサクラのことしか思い浮かばないというのに。

 こんなに心はサクラで一杯なのに。


 サクラの心は、お母様で一杯なんて。


 出会ったのはあたしの方が早かったはずなのに。

 あたしは、身体だけでもサクラを縛れなかった。


 あたしを置いてお母様を抱きにいった……、もう決定的じゃないか。


 あたしがどんなに懇願しようとも、サクラはお母様を選んだんだ。

 それほどにサクラの心は、お母様にある。

 守ると口にしたあたしを置き去りにしてまで、お母様に会いたくてたまらなくなったんだ……。

 あんなにあたしの身体を愛でてくれたのは、あれはあたしがお母様の娘だったからなのかも知れない。馬鹿なあたしはそれを知らず、サクラから与えられる快感に酔いしれて、そしてサクラを好きになって。


 サクラは……、きっとあたしの中のお母様を見ていたんだ……。


 涙がぽろぽろと零れて止まらない。

 身代わりにされているのに、サクラの愛撫に感じていたあたしの身体。身体を求める前に、サクラの心を求めればよかった。


 ああ、ここまでサクラを好きになっていたなんて。

 こんなに心が痛むほどに、サクラの心が欲しかったなんて。


「好きだよ……サクラ……」


 最初から、一緒にいれる時間を制限されていたのだ。

 あたしに触れないように線を引いていたサクラとの距離を詰めたのはあたし。これは自業自得。サクラを好きになってしまったあたしが悪いんだ。


 サクラは今、お母様を抱いているんだろう。

 夢の通りの光景が繰り広げられているのだろう。


 邪魔者はあたし。

 サクラの恋をとやかくいう権利はあたしにはない。


 サクラはお母様の愛人として生活していて、善意であたしを匿ってくれただけ。あたしが勝手に好きになった。


 サクラはきっと、帰って来ない。

 明日になればすべてがなかったことになれるんだろう。

 笑顔で送り出されるんだ。…執着などなにもなく。
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