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【SS】目が覚めたら…?
第28章 【ファン感謝】白雪姫 ③王子(モモ)
そしてあたしはサクラを忘れて、サクラのいない世界で――。
「できないよ……」
サクラがいないと笑えない。
サクラがいるところで生きたい。
「サクラが好き……」
諦めてばかりいながらただ流されるようにして城の生活をしていたあたしに、初めて芽生えた願望。
「サクラと一緒に居たい……」
かさり……。
心の中で、薔薇の花弁が落ちた音がした。
サクラによってこれから咲き誇ろうとしていたあたしの薔薇が、ひっそりと花弁を落としながら朽ちていく――。
枯れていく。
サクラへの愛で咲いた薔薇が。
咲くことが適わなくなって、生気を失っていく――。
あたしは哀しくて嗚咽を漏らした。
このまま、サクラに知られないでこの薔薇を枯れさせていいの?
せめて。
ねぇ、せめて――。
薔薇の花が朽ちていく音を、サクラに届けたい。
完全に枯れてしまう前に――、
「伝えなきゃ……」
サクラに今までありがとう、と。
大好きだった、と。
お母様と幸せになって、と。
そうじゃないと、気づかれずに散る薔薇が……可哀相だから。
どうせなら、最後はサクラに手折られたい――。
だからあたしは、薔薇園を出たんだ。
背後にした、昏(くら)い空の色に染まった白き薔薇達が、あたしの心の薔薇と同じように、次々に枯れていったことを知らずに。
……城でお母様を抱いているだろう、サクラの元へと――。