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【SS】目が覚めたら…?
第28章 【ファン感謝】白雪姫 ③王子(モモ)

「シズ、どうした? こっち向け」
サクラ……。
あなたは、ハルが来るのを待ってあたしを薔薇園に連れていたの?
そして準備が整いハルが来たら、あたしの気持ちなんて無視して、一緒に夜を過ごせというの? あたしに、ハルに抱かれろと? ハルに……あたしが想い続けているなどと嘘をついて。
「サクラ……」
「シズ……?」
「どうして、サクラ……っ」
ぽろぽろと零れ落ちた涙。
それはあたしが待っていた"王子様"との再会を喜ぶものではなく、王子様のハルに繋いだサクラに対する、悲哀の涙。恋しくてたまらない涙。
最初から別の女が好きで。
最初から別の男を宛がう気で。
かさり……。
元からあたしなんて、見てくれていなかったんだ。
かさり……。
「ひどいよ、サクラ!! どうして勝手に、あたしの気持ち無視してっ」
ハルの顔が強ばったのを知らず、あたしは嗚咽を漏らす。
「サクラ、サクラ、サクラっ!!」
薔薇が枯れてしまう。
はらはらと散る薔薇の花びらが、かさりかさりと降り積もる。
ねぇ、あと何枚花弁が落ちれば、この恋が終焉を迎えるというの。
「サクラに、会いたいっ!!」
「シズお前――」
ハルの硬質な声が耳に届いた。
「……サクラが好きなのか?」
あたしは…こくりと頷いた。
「男として?」
少し震えたその声にも、頷いた。
途端双肩をがしりと掴まれ、怒りと嘆きを併せた眼差しが向けられた。
……あたしを責めているように、刃のような鋭さをもって。
攻撃的なのに、ハル自身がとても傷ついた目をしていた――。

