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【SS】目が覚めたら…?
第28章 【ファン感謝】白雪姫 ③王子(モモ)
苦しげにぎゅっと細められた切れ長の目。
なにかを言いたげに開かれた唇。
迸(ほとばし)るような直線的な熱をあたしに向けながら、苦痛に耐えるような表情を色濃くあたしに見せつけ、そしてその精悍な顔を空に向けた。
依然あたしの肩にはハルの指が強く食い込み、声をあげたいほどに痛いのだが、声を出さないのは……あたし以上にハルの方が痛みに顔を歪めさせているのがわかったからだ。
あたしの胸を突くような、悲痛さ滲む表情で、今にも爆ぜそうな震える身体を堪えているハル。
それでもあたしはサクラしか見えなくて。
サクラのことだけしか考えられなくて。
なにも声がかけられなかった。
なぜハルがそんな表情をしているのか、なぜ昔のような意地悪い態度ではなく、熱っぽい眼差しを向けてキスしようとしたのか、その意味を気づくのを怖れた。その解答を辿る思考を遮断した。
多分、あたしはハルの表情が意味するところをわかっている。だがそうだと意識してしまえば、あたしは……、ハルへの好意と同情で、サクラの用意したその道を進まないといけなくなる。
あたしの心の薔薇が枯れるのを、サクラに知られずに――。
だからあたしは、ハルの表情を知らないフリをした。
あたしの心が罪悪感でずきずきと脈を打って痛む。
本当は再会したハルと、無事を喜びたかった。
今までどうしていたのか、ナツはどうしているのか、聞きたかった。
抱き合う以外の夜の過ごし方もあっただろう。
そしてハルだって、あたしを抱こうとしていないかもしれない。
このまま朝が来るのを待って、ハルの先導に従えば無事に城から出られるかもしれない。
……サクラがいなければ。