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【SS】目が覚めたら…?
第28章 【ファン感謝】白雪姫 ③王子(モモ)
 
 サクラと出会っていなければ、サクラと濃厚な時間を過ごしていなかったら、あたしは迷わずハルについていく。

 あたしは今までずっとハルを待っていたのだから。


 だけど、あたしを開放する王子様は……、ハルじゃないから。

 

「幸せに……してやんねぇとな……」


 弱々しい声が、夜の静寂に広がった。


「そうか。だからあいつ……」


 そしてハルは、力なくあたしの肩から手をどけた。


「ひとつ聞く。お前、サクラに抱かれたか?」


 真摯な瞳に、あたしは頭を横に振った。


「あいつは、お前を求めなかったのか?」


 こくり、とあたしは頷く。


「あたしがお願いしても、駄目だった」

「……願ったのか、お前……」


 泣きそうに悲哀に満ちた眼差しに、あたしは頷いた。

 そして思わず俯いた時――。


 ガツン。


 頭に衝撃。


「痛っ」


 目をちかちかさせて顔を上げれば、ハルの手刀があたしの頭上にある。


「な、な!?」

「このアホタレ。処女が童貞サクラに逃げられてんじゃねぇよ」


 そういうと、にやりと笑った。


「しょ、ど……」


 なんて卑猥な男なんだろう。

 だけどハルは昔からそうだ。ストレートな言葉を好んで使う。それに大概は動揺するけれど、ハルの言葉はいつもあたしの心に直撃する。

「意味くらいわかってるんだろ、童貞に逃げられたおねだり姫」

「っ!!」

 あたしの顔が真っ赤に染まったのがわかった。 


「ど、……いなわけないわ、お母様と」

「聞こえねぇ。ど?」

「ど……てい」

「聞こえねぇ。お前の口はどこについているんだ? ど、なんだ!?」


 あたしの頬をむにゅうと摘ままれる。……昔のように。

 だからあたしは手をばたばたさせながら、夢中で叫ぶ。


「童貞じゃないって言ってるの!!」

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