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【SS】目が覚めたら…?
第28章 【ファン感謝】白雪姫 ③王子(モモ)
「お前は誰だ?」
「え?」
「この国の姫だろ!? だったらなにを逃げる。お前は正当なる国王と王妃の娘。ならば堂々と背筋伸ばして、正面から欲しいものを手に入れてこい」
昔もそうだった。
挫けるあたしの背中をバシンと叩いて、必ず元気をくれた。
だからハルがどんなに傍若無人でも、嫌えなかった。
ハルが好きだった。
……サクラへの好きとはまた違う、親愛の好きだけれど……。
「お前を助けてやるって言っただろう?」
ハルは……哀しげに笑った。
「それくらい……男として、格好つけさせろよ。
――好きなんだ」
「……っ!!」
不意打ちの告白に、どきりとする。
だが――。
「お前の笑った顔が」
誤魔化された言葉こそが、わかりにくいハルの優しさ。
昔から彼はこうだった。いつもいつもあたしの一番の理解者だった。あたしが困った時、いつも思い浮かんでいた……黒髪の王子様。
ごめんね…。
ごめんなさい。
昔の王子様は、今の王子様とは違うの……。
「……それが唯一、アホタレな素顔を誤魔化せるからな」
ハルの目からなにかが落ちた。
「アホタレで悪かったわね!!」
それに気づかぬフリをして、昔のように悪態には悪態で返す。
「よし。だったら、善は急げで、乗り込むぞ」
「ほ、本気で?」
「勿論。俺様に不可能はない」
「ハル兄……」
「ほら行くぞ!!」
ありがとうハル兄。
本当にありがとう。
ハル兄のおかけで、あたしは……サクラを手に入れに、お母様と対峙する覚悟が出来た。
あたしは、この国の王女。
この城は、あたしの生まれ育った場所なんだ。
……お母様よりももっと、あたしはこの城に馴染んでいる。
あたしは、排除されるべき余所者ではないのだと。