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【SS】目が覚めたら…?
第28章 【ファン感謝】白雪姫 ③王子(モモ)
「ちょ、ハル兄、これはあまりに無謀というか、下ろし……」
「何者だ!!」
案の定、兵が両側から槍を交差させて入り口を封じた。
「なにってわからねぇの? この国の姫さんを、王妃に届けに来たんだが」
あたしは荷物か!!
「は!? そんなはずは……」
「お前達城勤めしていて、王女の顔も知らねぇのか? おい、"白雪"。お前は王女なんだろ?」
そこであたしに振るか。ええい……っ。
「そうよ、あたしはこの国の白雪姫。本物よ」
「……お前、なんだよその棒読み…。そこ成長しろよ…」
ハルが心底嫌そうな顔と声を向けた。
「し、しかたがないでしょう!?」
あたしは昔から、演技と突然の出来事に弱いのに。
「ありえない!! 王女はたった今、亡くなられたのだ!!」
「そうだ。姫を名乗る不届きものめ!!」
「お前死んだのか? だったらこのぷくぷく太ったのは誰だ?」
「失礼ね、ちゃんとここにいるじゃない。ぷくぷく太ったのはサクラのせいよ。彼に文句言って」
そう小声で軽口叩き合いながらも、あたしはハルと目線で別の会話をしていた。
なるほど、近隣国の王や重鎮が集う大規模の宴にて、大々的なあたしの死を告知して、お母様は悲劇の王妃になろうとしているのか。
まさかお母様が娘に手をかけようとしていたとは知らぬ者達は、この国の一大事となる訃報に慌てている…というわけ?
「死体はあったのか?」
「あるから不届き者だといっているのだ。捕まえ……」
ハルが動いたのは一瞬。
ハルの両手拳が左右の兵士の鎧のつなぎ目となる腹の部分に炸裂、大の大人達は声ひとつ出さずに崩れ落ちた。
「ハル……すごっ。王子に見えない、この荒くれぶり」
「さすがは俺様だと称えろ、アホタレ」
バタバタと忙しくひとが走り回る城内。
宴が開かれている二階の舞踏会場に続く螺旋階段の前に置かれているのは、大きな大きなガラスの箱。
その中にいるのは……。
「誰……?」
目を瞑っている女性が横たわっていた。