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【SS】目が覚めたら…?
第28章 【ファン感謝】白雪姫 ③王子(モモ)
着ている白いレースの衣装はとても素晴らしいが、それを纏う女性は、目を開いたとしても美しいとも愛嬌があるともいえないだろう、なんとも不揃いな顔の部位と様相を見せた。
分厚い唇には真っ赤な紅、頬には頬紅。髪は黒い縮れ毛。
「ぶはっ」
ハルが豪快に笑い出した。
その声に聞きつけた兵士は、笑いながら……かつ、肩にあたしを乗せたままのハルの拳や足の攻撃を受けて、簡単にばたばたと倒れていく。
「これはなに……?」
「この、ガラスの棺に入っているのが……噂に聞く"白雪姫"さ」
「はああああ!?」
「お前の美しさを妬む女王が喜ぶ身形に、よく出来たものだ。さすがは俺様の弟」
「おと……ナツの仕業!?」
「ああ。ナツは多才で、芸術的な仕事の腕を日々磨いている。ナツの手に掛かれば、今にも動き出しそうだな、棺のお前」
「あ、あたしでは……」
ナツ、あんた一体なにをしているの?
というか、この白いドレス…あたし着てみたい…。
「きっとこの顔が女王のお気に入りになったから、これが噂の"美しい"白雪姫ですとばかりにさらしているのだろう。あの女狐」
「だけどいくら何でもこれでは……。それに宴には常連客もいるはずだから、あたしではないとわかるわ」
「強国の女王が娘だと主張すれば、違うものでもそうだと言わねばならない。それが弱国の生きる道だ。
そして"白雪姫は醜かった"と歴史に刻まれ、真実は隠蔽される」
ばた、ばた。
会話している間にも、またハルの拳に倒れた兵が積み重なっていく。
被害にあっているのがあたしの国の兵士達ばかりなのを見ていると、弱い兵士で守られているこの国の軍備力を憂える。
「幾らなんでもこのお前はひでぇな、これは。だからさっさとまずは自分の名誉回復に行ってこい。邪魔する者は俺が抑えてやるから」