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【SS】目が覚めたら…?
第28章 【ファン感謝】白雪姫 ③王子(モモ)
お母様の泣き声響く、空々しい舞踏会場。
豪奢な服装をしている者達が群れている中心に、お母様がいるのだろう。
「白雪が……っ、ああ私の可愛い娘が……」
お母様、あたしは哀しいです。
……そう、少し前のあたしなら思っただろう。
だけど、そんなあたしを死体にしたいのだと見せつけるのなら、あたしの堪忍袋の緒だってぶちっと切れる。
城にはサクラに想いを伝えようと来たはずなのに、それだけではすましたくないとあたしの自尊心が輪郭を持っていく。
このまま、お母様の思い通りにやられてたまるか。
「なぜ白雪姫はお亡くなりになったんですか?」
人の波を掻き分けてもまだ中心は見えない。
だから大声を上げてみた。
「毒の…毒の入った林檎を食べて…猛毒にやられたのだ。ああ、可哀相な白雪。誰が誰が私の白雪に。ああ、毒であんな顔になるなんて」
あの顔は、毒のせいにするのか。
「悲しんでいらっしゃるんですか?」
あと少し。
もう少し。
「勿論だ。涙が溢れてとまらぬ。ああ、白雪……」
「生きていれば、きっと王妃様はお喜びになられることでしょうにね」
「ああ、本当に。白雪が生きていてくれたら……」
床に崩れ落ちそうなお母様を支えていたのは、白い軍服姿の男性だった。
黒髪を流しているが顔は見えない。
いやらしくその男性の腕に絡まる白い手に吐き気がしてくる。
お母様はどこまで愛人を作っているのだろう……。
「ではお喜び下さいませ、お母様」
あたしはお母様の前で、質素なドレスを両手で摘まんで深々とお辞儀をして、微笑んだ。
「白雪、毒林檎を食べずに無事でございます。あのガラスの棺の女性は、あたしの代わりに林檎を食べた者。可哀相なことをしましたが、この通り白雪は元気でございます」
その時のお母様の、ぎょっとしたような顔。
ざわめきの中でお母様は冷静さを失っているようだった。