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【SS】目が覚めたら…?
第28章 【ファン感謝】白雪姫 ③王子(モモ)
「サクラ…よね?」
「黙れ」
「サクラ……」
「黙れと言っている」
なにもなかったことにするの?
あたしを逃がそうとしたことも、あたしと触れあったことも。
楽しかった思い出が、悲しみの風に吹き流される。
かさり、かさり。
凄まじい速度で、心に咲いた薔薇が散っていく。
咲いた事実すらなくしてしまうほどに。
あたしの両目から涙が零れた。
「サクラ……好き」
なにも反応はなく。
冷ややかな目が返るだけ。
「あなたを愛しているの」
まるで氷のような、これは完全なる拒絶。
「あなたは、あたしのこと…、少しでも愛おしいと思ってくれた?」
「………」
「あたしの中に、あなたへの愛で育った薔薇が咲いたの……。枯らしたくないの、ねぇサクラ――」
「言うことはそれだけか?」
サクラの表情を動かせない。
あたしじゃ、駄目なの?
「サクラ……その服、ハル兄の……」
サクラは依然無表情だったが、ハル兄という単語に僅か反応したように思えた。
「ハル兄なら反応するんだね。どんなにサクラが昔からハル兄が大切でも、勝手にあの薔薇園に呼ばないで。あそこはサクラだけしか入れたくない」
「……っ」
「ハル兄を想い続けていたってなに? あたしはあなたが好きなのに!! あなたと生きたいのに!!」
「サクラ、どういうことだ?」
「……っ、予定外の要素が入ったようです。大丈夫です、お望み通りちゃんと始末しますから」
始末……。
ハル兄、駄目だったよ……。
心を伝えても、サクラは無反応だった。
手に入らないよ、サクラの心が。
こんなサクラ見たくなかった。
こんなサクラ知りたくなかった。
サクラの全てが偽りだった……。
――と、あたしは、そう思いたくないの。
あたしにとってサクラはお日様だった。
サクラはあたしの自由という希望だった。
あたしにとってサクラは真実だった。
あたしの想いは本物だった。
だからあたしの心に、ちゃんと薔薇は咲いたの。