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【SS】目が覚めたら…?
第28章 【ファン感謝】白雪姫 ③王子(モモ)
 



 だったら……、ねぇいっそ……、


「サクラ、お母様と――」


 あなたの手で、あたしという薔薇を手折って欲しい。

 ああ、枯れた薔薇は自ら朽ちるのが運命か。


「幸せになってね」


 あたしがサクラの携帯している剣を奪って、それを胸に突き刺すのと、


「サクラ――っ!! お前を解放する!! 

すべてはシズから聞いてる!! だから……っ」


 ハル兄の声と怒号と悲鳴が同時に重なって。

 そして耳障りな女の高笑いが鼓膜を震わせた。


「あはははっ!! 死ね死ね死ねっ!! これでこの世で一番美しいのは私だけだ!!」



 視界に真紅に染まった白い薔薇が散っていく。

 すべてを無くした薔薇は、無に還っていく――。


 愛も憎しみもすべてから解放されて、

 ああ……これが"自由"なんだね。


 ああ、なんて身体が軽いんだろうね。

 まるで大空に羽ばたく鳥になったみたい。


 だけど、なにかね…寒いんだ。


「馬鹿なっ!! 俺がどれだけ……っ!!

必死の思いでハルさんに託して、断ち切ろうとしてたのに!!」


 夢だよね。

 サクラが……あたしを抱きしめて泣くなんて。

 サクラはあたしを"始末"しようとしていたんだから。


「どうして、どうして……っ!!

なんで薔薇園でハルさんと過ごしてないんだよ。どうしてここに来た!?」


 ああ……、ここは寒いよ。

 薔薇が……枯れてしまったの。


 音もない、縹渺(ひょうびょう)とした世界――。

 

 サクラ、ごめんね。


「……目を開けろ、開けろ、開けろ!! 俺はこんな顛末望んでいない!! なんのために俺は、シズル、シズル――っ」


 勝手に好きになってしまって。



 ならばせめて、あなたが望む通りに――、



「俺に触れるな、俺の姫に触れるな――っ!!」



 ……あなたにとって、必要のない存在は消えるから。



 
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