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【SS】目が覚めたら…?
第28章 【ファン感謝】白雪姫 ③王子(モモ)
 

 王妃はそれくらいする。

 だから俺は――。


――姫より王妃を愛しております。実の母親を俺は愛しました。


 屈辱の言葉を。

 もう母親としての愛をも感じない女に言った。


――ではその証拠に、ここで我を抱くか?


 誰が……!!
 
 誰がお前などに勃つものか!!


 息子に抱かれることに興奮をする女に辟易する。

 毒々しい真っ赤な唇に、吐き気がしてくる。


――それは後で。俺が王妃様を選ぶ証拠に、白雪に屈辱を与えましょう。どこにいるかわからぬ白雪を探すよりも、殺してしまえばいい。


 予定変更で、ナツに王妃の死体として作らせた人形を、姫の死体として使う。誰からも嘲笑されるようにとナツに作らせた、ガラスの棺が……誰からも美しいと称えられた姫の事実を書き換える。


 俺が王妃を選ぶのだという証拠に仮に婚約したところで、姫に恥辱を与えねぬ限りは疑われるばかりで、難易度高い条件が積まれていくだけ。それを回避するためには、不本意なことを言わねばならない。


――そして後世には、醜い白雪姫がいたという記録だけが残る。今宵の宴は多くの方々がいらっしゃる。皆の目に焼き付かせばいいでしょう。白雪姫は実はどんな風体だったのかということを。誰が一番美しいかということを。


 だれがそんなことをさせるか。

 姫は永遠に美しいのだ。

 永遠に美しい……妹なのだ。


――ひと芝居うってください。婚約を発表する前に。

 時間稼ぎが必要だ。

 多少の予定は変更になったが、俺のすべきことは変わらない。
宴で"その時"を、疑われずに待つために。

 ハルさんから貰っていた隣国王子としての服に着替えた。

 ハルさんが姫に求婚していた時のことを思い出す。

 あの時小さかった俺は、今の俺の体格だったハルさんに憧れていた。

 俺もきっちりとしたみなりで、姫と対等の立場となれる肩書きをもって、堂々と姫を求婚出来たらと。


 今、肩書きと服はある。

 だが求婚出来ない。


 どうして……俺を捨てた母が王妃になっていた?

 どうして禁忌を招く淫魔だったんだ。


 姫を純粋に愛したそれまでもが、流れる血によって穢らわしさを強めていく。


 ただ姫が好きだった。

 姫と結ばれたかった。


 それ以上は望んでいなかったのに――。
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