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【SS】目が覚めたら…?
第28章 【ファン感謝】白雪姫 ③王子(モモ)
俺の腕の中で冷たくなる姫。
こんなことになるのなら、たとえ実の妹であろうとも抱けばよかった。
抱いて抱き尽くして、愛を語ればよかった。
俺の愛は……どこに行く?
姫が幸せでいれば、俺はひとりで生きられるとそう思っていたのに、姫がこの世にいない世界で、どう生きろと?
「好きだ……っ」
俺は泣きじゃくりながら姫を抱きしめる。
「お前が好きだ、愛しているんだ!!」
だけど返事がなく。
涙で滲んでぼやけた世界で、誰かが囁いた。
"お前の力は、なんのためにある?"
ひとの疵を、自分の身体に転移できる俺の力――。
だったら、だったらこれで姫の疵を……っ!!
この力で俺は多くの人間達に怖がられ蔑まれ。
俺を守ってくれた母親からも、俺は捨てられて。
散々の思い出しかないこの力だったけれど。
だけどこの力で、姫を治癒出来たのなら。
散ろうとするこの薔薇を、手品ではなく本当に俺の手で蘇らせることができるのなら。
愛する姫を救うのが俺の生きた証だと、嬉しく思うから。
「生きて――」
俺の命のすべてを捧げる。
だから姫、シズル……あなたは戻ってこなくてはいけない。
なにもない俺とは違い、あなたはあなたを愛し守ってくれるひと達がいるのだから。
愛されるために生まれた白雪姫。
だからどうか、俺の命で永久に咲き誇れ。
シズル――。