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【SS】目が覚めたら…?
第28章 【ファン感謝】白雪姫 ③王子(モモ)
 

「ナツお前、シズが目覚めたら真っ先に俺を呼べと入ったろうが!!」

「てへ♡ 僕だってしーちゃんとお話したかったんだよ。ハル兄、ずっとしーちゃんを独占してたじゃないか」

 ああ、この兄弟は大人になっても仲が良いんだ。

 ハルがナツを、自分に似て美男子だと言っていたことは嘘じゃない。

 タイプの違うふたりの美貌が並ぶと、凄い迫力だ。

 ……だけどそこにいない。


 黒髪の、理知的な美貌を魅せていた、最愛のひとが。 



「ハル……。サクラは?」


 するとハルはナツと顔を見合わせて、怪訝というような顰めっ面をする。


「誰だ、サクラって」

「え!? サクラよ、モモちゃんよ!? ハル兄を慕って、ナツの友達だった」


「お前知ってるか?」

「ううん、僕…そんな友達いないけど」


 ちょっと待って。

 ねぇ、ねぇ!!


 サクラと出会ったところから、夢だったというの!?


「サクラよ!? 黒髪でメガネをかけて、頭がとてもいい……っ!! ナツという名前の鷹でハル兄とやりとりしていた……!!」

「お前……ナツって俺様の弟の名前と同じじゃねぇか。誰かそんなけったいなことをするんだよ」

「嘘よ!! サクラはいたわ、ちゃんと!!」

「シズ……、お前寝惚けたんだ。結構長旅だったからな」


 ハルは苦笑する。

 その時初めて気づいた。

 ハルの服が、あの毛皮ではなく……、シルクのブラウス……サクラがよく着ていたブラウスを着ていたんだ。

 いやな予感がしたが、その輪郭を突き止めるのは怖くてできない。
  
 
「ハル……、長旅ってなに?」

「覚えてないのかお前」


 ハルはあたしの顔に、自分の顔を近づけて笑った。


「お前、嫁いできたんだ。隣国の第一王子……次期国王となる俺様の元に」

「えええええ!?」


「おいおい、それすらすっ飛ばすほど、昨日の初夜がきつかったか?」

「しょ、初夜!?」

「……ああ、うまかったぞ。ごちそうさん」

 ハルは妖艶な流し目を寄越して、ぺろりと舌で自らの唇を舐めた。

 まるで獲物を食らった肉食動物のようだ。

 ……あたし、食べられたというの!?
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