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【SS】目が覚めたら…?
第28章 【ファン感謝】白雪姫 ③王子(モモ)
 

「もぅ、ハル兄飛ばしすぎたんじゃないの!? しーちゃんがこんなにボケボケしちゃってるの」

「ボケボケしてるのは元からだろ」


 夢だというの?

 あたしの本当の世界は、サクラがいない世界だったというの?


「隣国なのになんであたしの部屋なの!?」

「お前が慣れるようにと俺様がお前の部屋と同じ造りにした。ほら、壁紙ちょっと違うだろ。それに細かいところ、ちょっと違う」

 本当だ…。壁紙は薄いピンク色になっている。

 そして照明とか装飾品も、あたしの部屋のものではない。

 だからこそ泣きたくなってきた。


――お前、嫁いできたんだ。


 知らない。

 あたしは知らないよ!!


「あたしは、サクラの剣を胸につきたてたのよ!!」


 あたしからサクラの残像を消さないで!!

 サクラが存在していたというのは、あたしが動かぬ証人。


 するとハルが困ったように頭を掻いた。


「お前自分の身体を見てみろ。疵、あるか?」


 ネグリジェの胸元から覗いて見たあたしの身体は――


「なんでぇぇ!?」


 …疵はなかった。

 代わりにあったのは――。


「きゃああああ、身体に赤い痕、胸からお腹、太腿まで!! なにこれあたし病気!?」

「ハル兄、つけすぎ!! 初夜だからってこんなに頑張るから、しーちゃんが悲鳴上げちゃうんじゃないか」

「おいこらナツ……」

「ん……?」


 微妙に声が小さくなる兄弟や、ハルのナツへの忌々しげな目の意味に気づかずして、あたしは混乱の境地に居た。

 あるはずの疵がない。ないはずの痣がある。

 つまり、あたしの知るサクラに繋がる証拠は、なにもないのだ。

 代わりにあるのは、あたしの知らぬ間に流れた時間。それはハルの妻となり、美麗になったナツを見ている、現在が物語る。

 あたしの記憶がないだけで、兄弟二人はしっかり記憶がある。
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