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【SS】目が覚めたら…?
第28章 【ファン感謝】白雪姫 ③王子(モモ)
「サクラ……っ」
あたしはたまらず泣き出した。
「サクラはいたの、ちゃんといたの!! あたしはちゃんとサクラが好きだったの、サクラじゃないと嫌なの――っ!!」
「……なにが?」
ハルの低い声。
「あたしは、サクラと結婚したかった。サクラと初夜を迎えたかった!!」
……苦しみに崩れたハルの表情も知らず。
立上がったナツにも気づかず。
そして――。
「これだけ愛されているのに、逃げるの卑怯じゃないか?
折角……ハル兄が必死になってお前を手当したというのに。
サクラ――」
ナツが物陰から、連れてきたのは――。
黒髪の……あたしの大好きなひと。
「サクラ、サクラ!!! いるじゃない、サクラは存在するじゃない!! どうして嘘をついたの、どうしてサクラがいないなんて言ったのよ!!」
「サクラが望んだんだ。すべてをなかったことにして、あるべきところに戻したいと……」
サクラは無言のまま、苦しそうな眼差しをあたしに向けた。
「サクラ、どうだ? お前の望んだ通りに俺様は生まれ国の王子に戻り、女王を武力で脅したおかげで、呪いをかけられたナツも元に戻りふたたび俺達は王族になった。そして俺はシズを妻にして、この国の王妃とする……。
いいのか、サクラ本当に。俺達の会話を聞いていて、それでもいいとやはり思うのか!?」
サクラは泣きそうな目をしていた。
「……です」
「聞こえねぇ」
「嫌です!!」
そしてサクラは、あたしを背中で庇うように座ると、叫んだ。
「このひとを渡したくない。たとえハルさんが相手でも、俺の友達のナツが相手であっても、このひとが俺以外の男に抱かれていると考えただけで頭が沸騰しそうになるくらい嫌で、気が狂いそうで。
頭では納得しているつもりでした。だけど……、こうして俺のいない時間ができていくと思えば、姫の中からも完全に俺が消えていくのだと思ったら……耐えられない!!」
「で、どうするつもりだ?」
ハルはタバコを取りだした。
眉間に皺を寄せ、怒っているかのような表情でタバコに火をつけ、紫煙をくゆらせる。