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【SS】目が覚めたら…?
第28章 【ファン感謝】白雪姫 ③王子(モモ)
「つまりそんな状況で、サクラ……、お前は俺に……」
だがそんなハル兄の言葉を遮るようにして、突然サクラが、ベッドで上体を起こしているあたしを両手を拡げてぎゅっと抱きしめた。
「おいこら、無視かよ」
そんな言葉も聞いていないように、細く長い息を静かに吐いた後、サクラが呟いた。
「よかった……」
その腕の力強さはあたしの呼吸をとめるほどなのに、それとは正反対の頼りなげな震えが伝わる。
それはあたしを見るサクラの声音までもを震撼させていく――。
「あんたが妹じゃなくて、本当によかった。ああ、本当によかった……っ」
感極まったというような上擦った声は激情に小刻みに揺れ、同調したように揺れる瞳には、焦れたような……熱を感じた。
それは広間であたしを拒んでいたような冷気は一切無く、サクラから与えられる熱さはあたしの心を溶かしていく。
信じていいの……?
これがサクラの本心なのだと、サクラはお母様のものではないと思っていいの?
あたしの好きを、あなたは受け止めてくれる?
だけど――。
「あたし、ハル兄と結婚してたんだっけ!?」
ハルを見ようとすると、サクラの手が彼の胸にあたしの頭を押しつけた。
「違う。それもハルさんの嘘だ」
まるでひどく怒っているかのように、ぎゅうぎゅうと。
く、苦しい……。
「だったらハル兄との初夜は……」
「ありえない!! 俺もハルさんに助けられていた間の記憶はないが、もしそんな事態だったらハルさんは服を着て、別の部屋にいないはずだ」
さらにひどく胸板に押しつけられて窒息しそうになり、慌てて顔を横にそむけて大きく呼吸を繰り返す。
「……ほぅ? なぜそう言い切れる?」
「姫をすべて味わったら、離れられるはずがない!! 擦り合わせるだけの俺だって、服を着たくなかったんだから!!」
言い切ったサクラ。
「擦り合わせる…ねぇ? お前とシズの、どことどこを…だ?」
「っ!!」
「なんであたしを見るの、サクラ。言ったのはサクラでしょう!?」
「!!!!!!」
サクラが沸騰しそうだ。
そんな時、ハルの咳払いでサクラがしゃんとなるのは、サクラもあたしと同じようにハルへの従属精神を植え付けられているのだろうか。