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【SS】目が覚めたら…?
第28章 【ファン感謝】白雪姫 ③王子(モモ)
「それはつまり、俺がシズを幸せに出来ないと言いたいのか?」
ハルが咥えるタバコの煙が、細くなりながら宙に消えて行く。
「違います。俺が、ハルさんの役目をしたいんです。ハルさんではなく、俺が姫の笑顔を守りたいんです。幸せにしたいんです」
その悲痛な叫びに、あたしの胸はきゅうと切なく疼く。
まるで求婚の承諾をハルに求めているように、サクラは真剣で必死だった。
「俺を奴隷にして扱き使ってもいいです。望むなら捧げられるところすべて捧げます。ですが、俺に……姫を、シズルさんを下さい。どうしてもシズルさんを諦めきれない。どうしても欲しいんです!!」
「サクラ。お前が俺の奴隷になったら、シズがどうなる? 今お前の身分はないというのに、シズをどう幸せに出来ると? シズを路頭に迷わす気か?」
「ハル兄、そんな言い方っ!!」
「しーちゃんは黙ってて」
厳しい顔をしたナツが自分の唇に人差し指をたてた。
「俺が働きます」
「働き詰めのお前にシズをどう笑顔にさせられる? 大体シズは城育ちで、城外のことはなにひとつわかっちゃいねぇ。
たとえ色欲に耽るだけのあの淫魔の娘であったとしても、俺らの国に統合されかかっている弱体国であろうと、シズは生まれながらの王女。箱庭育ちのシズが、身分のないお前と共にいて平穏に暮らせられるとでも? シズが庶民の女のように、料理や裁縫をしたりできると思うか? なによりこのアホタレに、そんな高等技術を本気に期待するのかお前!!」
……なんだかひどい。アホタレは認めるけれど、あたしは料理を作れるんだ。サクラに鍛えて貰ったんだから。
「ハル兄。こう見えてもあたしはサクラに教わって料理ができるの。お裁縫も習ったの」
ちょっとばかし威張り腐って言ったら、ハル兄だけではなくナツにも驚かれた。あたしがお料理とかできて悪いか!!