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【SS】目が覚めたら…?
第28章 【ファン感謝】白雪姫 ③王子(モモ)
「……ハルさん好みの味付けを出来るように、俺が教えたんです」
今度はあたしがびっくりした。だからスパルタだったのか。近く……サクラが大好きなハルにあたしを渡し、ハルを喜ばせようと。
「ああ、塩味を薄くさせたのは……、ハルが味付けの薄い食事が好きだったんだね…」
思わずそう呟くと、サクラの頭だけぐりんとあたしの方を振り返り。
「いいえ、ハルさんは濃い味付けがお好みですが、健康のためにと」
「塩味を控えないといけないって……まるでハル、老けたおっ……」
……おっさんと続けられなかった。ハルの表情が凄惨なものになったから。なんでだ、なんでそこまで痛ましい顔つきになる!?
「………サクラ。その忠義心は褒めてやる。だが俺は許せない」
「ハル兄……っ!!」
「しーちゃん、しーっ!!」
「シズを浚う男が奴隷だの庶民だの、そんなのに俺様は負けるわけにはいかない。本当に俺に許可をとりたいのなら――。
――王子の俺を超える、素晴らしい国王になれ」
サクラは驚いた顔でハルを見上げた。
「今、シズの国は女王が捕獲され、主なしで揺れている。これからこの国や同盟諸国との統合という大きな仕事を成し遂げねばならない。その新たな統合国、俺の国やシズの…お前の国を核とした……、最強国の国王となれ!!」
「それは、王子に戻ったあなたがっ!! あなたは、新たなる大きな国に必要なひとだ。今回だって、あなたが先頭に立ったから皆が従ったんだ」
サクラの必死の言葉に、ハルはふっと笑った。
そして――、
「!!?」
他人に決して謙(へりくだ)らない傲岸不遜の男が、サクラを立たせて、代わりにその足元で身を屈め、片膝をついて言ったんだ。
「ならば、新たなる国に必要な俺をお使い下さい」
驚愕したまま固まるサクラに向けて、上げたハルの顔には…、冗談とは思えぬ真摯な色が濃く出ていた。
それは自棄になったものでもなく、ハルの顔にあるのは、"信頼"。