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【SS】目が覚めたら…?
第28章 【ファン感謝】白雪姫 ③王子(モモ)
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なにがなんだかわからぬままにナツに着替えさせられて、そして連れて来られたのは大広間。
ナツ自身、ハルが昔着ていてサクラが着ていた、あの正装と同じ形の軍服の飾り緒だけを赤にして、清爽な笑みを見せるその見目麗しい姿は、生まれついての王子の気品を見せつけた。
ああ、あのハナタレが。
成長って本当に恐ろしい。
そんなナツにエスコートされて入れば、反対側でひとと話していたハルがやってくる。
「どう、ハル兄。僕の作ったドレス」
「ん、まあまあだな」
ナツが作ったという、素敵な刺繍が施され、レースがふんだんに使われたドレスは見方によって色をかえる、まるで虹色というべき見事なもの。
こんな素敵なドレスを作れるのは一流の仕立て人でも難しい。ナツが自分だと言い張り嬉しそうに顔を綻ばすから、ナツが作ったということにしておいてあげた。
そんなドレスを"まあまあ"程度にしか思えないハルの目は、もしかして腐っているのかも知れない。頻繁に吸っているタバコのせいか。
「お前は心の声がただ漏れなんだよ。タバコで腐るか、このアホタレ」
ハルの軍服もナツとお揃いのもので、飾り緒が黒だ。
落ち着いた色合いとなっているせいか、髪を流しているせいなのか、野性味溢れた精悍な凄みが大人の色香を撒き散らしている。
思わずくらくらしているあたしの反対の手を、ハルはとった。
そしてあたしは、右にナツ、左にハルにエスコートされるという贅沢な演出で広間の真ん中に連れられ、そして――。
「よぅ、次期国王。次期后を連れてきたぞ?」
「もぅ…。早く結婚して、早く"次期"をとっちゃってよね」
現れたのは、疲れた顔をしながら大勢に取り囲まれていたサクラ。
時間が止まった。
その服は、お母様と共にいた時のもの。
ハルとナツとお揃いで、飾り緒だけが金色で。
光輝く服装に負けない、サクラの美貌がそこにあった。
サクラは、あたしをみると困ったように苦笑した。
それはあたしの知る優しいサクラで。
あたしを冷たく突き離したサクラではなくて、あまりにも嬉しすぎたあたしは、鼻の奥がつんとなるのを堪えた。