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【SS】目が覚めたら…?
第28章 【ファン感謝】白雪姫 ③王子(モモ)
「この国の王子様の服なんでしょう? 色違い3着もあるんだね」
「いや、この服は1着しかない。ハルさんとナツのは、裁縫担当のナツの手作りだ。きっとあんたのドレスも」
「は?」
裁縫担当ってなに?
「俺が着ていた服はあんたの血で真っ赤に染まっていたらしいが、洗濯担当のナツが白くして、血がこびりついた金の飾り緒の部分は、大工担当のナツが金を溶かして精錬し、飾り付け担当のナツが飾り緒に細工した。本当にナツは凄いよな。この会場に飾られている料理は、料理担当のナツが作ったものだろうし、会場がやけにぴかぴかなのは清掃担当のナツのおかげだろう」
「ナツがたくさんいるの?」
「いいやナツはひとりだ」
そう言うと、声を潜めて愉快そうに笑った。
「きっと、自分がいるからハルさんは大丈夫だという、ナツなりのアピールなんだろうな……」
サクラは独りごちた。
静かな音楽が流れゆき、あたし達の間にも会話がなくなって。
互いの息遣いだけがやけに大きく聞こえるような、妙にドキドキがとまらずにいた最中、すっとサクラの顔があたしの耳に近づいた。
「好きだ……」
あたしの耳に、サクラの熱っぽい息と言葉が囁かれた。
愛の確かめ合いをしたかったあたしは、不意打ちのようにストレートできたサクラの言葉に、胸のドキドキがとまらずに気が遠くなった。
そんなあたしの手をぎゅっと握りしめて、サクラはあたしを見た。
それは真摯な……熱の籠もった眼差し。
「ずっとあんたを求めて、眠れない夜を過ごしていた」
あたしの手を握るサクラの手が動き、指が絡み合う。
は、ぁ……と詰まった息をしたあたしの顔は、溶けそうなほどに熱い。
「こうして女のあんたに触れたくて。あんたの特別になりたくて。
……男として愛されたくて」
あたしの呼吸が攣ったように乱れていく。
「あんたが欲しい」
向けられた切ない顔。熱に掠れたその声に、言葉に、胸が苦しい。