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【SS】目が覚めたら…?
第28章 【ファン感謝】白雪姫 ③王子(モモ)
だが退室しようとしても中々うまくいかないあたし達。
愛し合いたい気分で盛上がっているのに、新国王お披露目の宴(だったらしい)で主役の逃亡を、集う来賓客は許さなかった。
あたしの知る限り、昼頃にハルがあたしとサクラを認める条件に、サクラに国王になれと言ったばかりなのに、なんで夕方にはこうしたお披露目会(ただし、次期国王としてらしいが)になっているのかわからない。しかもあたしは、ハル達が捕えた敵方女王の娘だというのに、次期妃は確定のようで、もの凄い歓迎ぶりだった。
ひとつ思うのは、サクラがハルにああして頭を下げなくても、ハルはサクラを国王にしようと、ナツと密やかに準備していたんじゃないかということ。この宴を次期国王お披露目会に即席でしてしまうには、無理がある。
もしナツが本当にサクラの洋服とか宴の準備をしたというのなら、数時間でひとりでは出来やしない。あたしはサクラが眠っていた間に、着々と支度がなされていたように思うのだ。
そうでなければ、王子のハルやナツを乗り越えて、それまでの功績がどうであれ、かろうじて貴族の身分の男が国王にまで出世は出来ないだろう。
つまり、サクラの身分剥奪は建前だけのものにしか過ぎず、サクラを国王にと望む声は前々から出ていたのかも知れない。
それをハルがまとめあげ、あたしの立場も確保してくれた…というのは、考えすぎだろうか。ハルを過大評価しすぎなのだろうか。国王という責務から逃れようとサクラに押しつけた…だけのようには思えなかった。
サクラが国王になるということを称賛されているのは間違いない。不穏な冷気はないものの、逆にサクラに取り入ろうとする輩の熱気で包まれた広間は、異様な雰囲気だった。
ここは逃げるが勝ちだと思うのに、なにより積極的に来賓客をサクラに押しつけるのは、
「おい、サクラ。お前の…新しい国作りのビジョンはなんだ? こちらの公爵がお尋ねになられている」
ハルだ。
立ち話をする議題でもないし、どんな話題でも論じ合う気分じゃないということをわかっていながら、広間の出入り口付近でにやりと笑って仁王立ちするハルは、適当に誰かの話し相手にさせて行く手を塞ぐんだ。