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【SS】目が覚めたら…?
第28章 【ファン感謝】白雪姫 ③王子(モモ)
 
 それらの攻撃をなんとかかわしてあたし達がこっそり退室しようとしても、たとえそれまで対角線上にいようとも、気づけば必ず目の前に立ち塞がるこの目敏さと素早さ。

 野生猿か。

 そう口に出来ないのは、そう思っているコトを見抜いているハルの睨みのせいだ。あたしはすごすごとサクラの背中に隠れてしまう。

 どうしてハルは、昔からあたしに意地悪なことばかりするんだろう。


――誰だ、サクラって。

――シズ……、お前寝惚けたんだ。結構長旅だったからな。


――お前、嫁いできたんだ。隣国の第一王子……次期国王となる俺様の元に。

――……ああ、うまかったぞ。ごちそうさん。


 目覚めてすぐに、サクラなど知らない、ハルと結婚して初夜を迎えたなんて衝撃発言…、あたしの心臓が幾つあっても足りない。サクラをけしかけたためだとはいえ、本気にあたしは倒れそうになったのに。


 ふと、思った。

 ハルと結婚式やら初夜やらがなされていなかったのなら、あたしはなんで長旅すらしらないほど眠りこけていたのだろう。

 どうしてあたしの身体に刺した剣の痕がないの?

 それは夢だったの?


――これだけ愛されているのに、逃げるの卑怯じゃないか? 折角……ハル兄が必死になってお前を手当したというのに。


 疵を負ったのは、サクラだったの?


――俺が着ていた服はあんたの血で真っ赤に染まっていたらしいが。

 いや、やはりあたしは疵を負っていたはずで…。

 出口ない思考を巡らすのは、あたしの現実逃避なのかもしれない。

 わかりそうなのにわからない、それを延々と繰り返していた時、あたしの手を握っていたサクラの手がすっと離れ、あたしの腕に指文字を描き始めた。


 "ふたりになりたい"

 "だきしめたい"

 "さわりたい"

 "がまんできない"


 そんなことをあたしに伝達しているのに、サクラは爽やかな笑顔を振りまき、そんな欲を抱えていることを微塵にも見せない。


 あたしは駄目だ。多分顔に出ている。それくらい切羽詰まっているんだ。

 サクラを独占したい。

 サクラの体温を感じたい。
 
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