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【SS】目が覚めたら…?
第29章 【白雪姫感謝】アナザー○○雪姫
神経質そうなメガネをかけたその男は、服装とは裏腹に、慎ましやかで理知的な美貌を見せているのだが、銃口を向けられていても平然としている姫とは違い、銃口も声も身体も微かに震えている。
「誰に銃を向けている、あ゛!?」
姫の威嚇だけで、猟師は真っ青な顔で銃を手放し、姫の前で頭を下げた。
「すみませんすみません、なんで俺がこんな役なんだかさっぱりわかりませんが、俺には悪意はありません!! 悪意があるのは作者です!!」
「ふぅ……サクラとやら。腹がへった」
しかしハル雪姫は聞いてはいない。本能の赴くまま。
偉そうな呟きに、猟師サクラが心得たとばかりに顔を輝かせて、腕まくりをした。
「では俺が料理を。ハル雪姫はなにをお食べになりたいですか?」
「肉」
即答である。
「骨つき肉を両手に持って、歯で豪快に引きちぎって、思う存分食べたい」
するとサクラは困ったように答えた。
「姫……。骨付き肉というものは、漫画の世界でしかないものなんです。現実の世界では……」
「作れ」
「げ、現実の世界では……」
「作れと言っている。俺様がかぶりつける大きな肉の塊。俺様は骨を手で持って食いたい」
「だからその…」
「それとも、36歳は歯槽膿漏や入れ歯で、肉を引き千切れないと思ってるのか⁈」
いらぬ疑いをかけられたサクラは、泣きそうな顔になったが、お年頃のハル雪姫もまた、悲壮な表情であった。
その時である。
「危ない、姫。下がって!!」
大きな黒いクマが現れたのは。
サクラが猟銃を手にするよりも早く、襲いかかろうと咆哮するクマに向けて、姫が吠える。
「GORAAAA!」
そしてクマが怯んだ隙に、ハル雪姫はドレスを両手で摘まむと、助走を付けて走り、高く飛び――。
「俺様を食おうなぞ、100万年早いんだよっ!!」
回し蹴り一発。
そして――。
クマ鍋を堪能するふたり。
クマは肉だけ食べると植毛効果があるのだと言ったサクラの言葉を信じて、クマの毛皮の上で姫はサクラが作ったクマ鍋を堪能する。