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【SS】目が覚めたら…?
第1章 お正月に目覚めたら。
   
 

「ねぇ、しーちゃん。"そーだね、それは是非実現しなきゃ"とか、"実現するのはいつにする?"とか"このままナツの寝室で、去年の頑張りを確かめてみようか"とか、建設的な言葉をちょうだい。ねぇ、しー……」


 なにかが風を切った。

 そして次の瞬間、卑猥な段を手にしたナツと……おばさまがいない。


 風が吹いたあの一瞬。


 ナツの喉もとに、"ウェスタンラリアート"をかましたおばさまが、そのままの勢いで奥の部屋に連れて行ったように思えたのは、幻影だろうか。

 そしてその連れ込まれたと思われる部屋にて、凄い物音が聞こえるのは……幻聴だろうか。



 ハル兄はカニのエキスを吸い取ったその肉厚の唇に、タバコを差し入れながらぼやく。


「……ナツの卑猥さ、誰に似たんだろうな」


 なんて自虐的なことを言い出すのか。

 だがその主は、そんなつもりは毛頭なかったようで、


「え、私か!?」


 今まで風景の一部と化していた……佐伯パパが驚いた顔を見せた。


「それ以外に誰がいるんだよ」


 あたしは、無意識に指を差していた。

 卑猥な帝王に。


 ぴくり。


 ハル兄のこめかみに青筋が浮いた。


 そんな時だ。



 じゃ~ら、じゃらじゃらじゃら♪



 パニックホラー、人食い鮫の「ジョーズ」の音楽が流れたのは。

 
 引き攣った顔をしたハル兄は叫んだ。


「誰だ、俺様のスマホの電源を入れたのは!!」

「はいはい、あたし!!」


 あたしは得意げに胸を張りながら手を上げた。


「ハル兄のスマホ電源切れてたから、ちゃんと入れておいたよ」


「アホタレ!! 去年は働き尽くしだった俺様のスマホを、正月くらい休ませねぇか!! 初日から働かせるとは、お前は鬼か!! 世界のスマホをそんなに敵にしたいのか!!」


 あたしの頭の上にチョップが落ちた。

 おばさまにアップにして貰ったのに、なんて容赦ない。

 というか、なんであたし怒られたの?

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