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【SS】目が覚めたら…?
第1章 お正月に目覚めたら。
 
「ハル兄、自慢のスマホさんの休養より、性急さを必要とする医療現場を優先させようよ。画面……病院からの着信じゃん」


「知らん。これはきっとへそ曲げたスマホの悪戯だ」

「悪戯って……。病院から寄越された電話だから、ちゃんとそうやって…」

「知らん」


 ハル兄は頑なに出ようとしない。

 鳴り響くジョーズ。


 正月早々、縁起が悪い。



「とりゃ」


 思い切って、机の上に置かれたままのハル兄のスマホ画面、通話のボタンを押すと、ハル兄が涙目であたしの頭にチョップを連続五回食らわせた。


「なんで出るんだよ!!」


 …といいつつ、繋がってしまった電話を、律儀に出てしまうハル兄は、腐っても几帳面なA型のお医者さんだ。


 それとも、慣習になっているのだろうか。


「ああ、ああ、ああ、ああ、ああ、あ゛~!?」


 やるきない「ああ」が、やばい「あ゛~」になった瞬間、ハル兄の眉間にぎゅうと縦皺が刻まれ、思わずときめいてしまったあたし。

 そんなあたしを知ってか知らずか、バシバシとまるでバスケのドリブルのように、あたしの頭が叩かれる。


「俺様は休みだ。そんなのは今日担当の小林の得意分野なんだから俺が出なくても……嫁が産気づいて早退!? 生むのは小林じゃねぇだろ。しかも熟女好きのあいつの嫁、年末更年期障害のホルモン異常で俺のとこに診察にきたぞ!? あの膨れた腹は、妊婦の腹じゃねえぞ!? だったら田所は……はああ!? 二日酔い!?」


 お医者さん事情も色々あるらしい。


「だから俺は……今日は絶対行きたくねぇんだ!! 前々から言ってたろう、今日は駄目だと!! 俺様ルールは絶対だ」


 帝王ルールを発動させてしまったよ、このひと。

 電話の相手が不憫に思えて仕方が無い。
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