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【SS】目が覚めたら…?
第3章 Ⅱ.ナツと……
 

――俺の子を孕め。


 本当に似た者兄弟だ。


 子供ができるのを面倒くさがるオトコが多い世の中、佐伯兄弟は子供を切望する特異な存在らしい。


「僕……主夫になる。栄養学も勉強したから、離乳食も作れるし。編み物だってできるし」

「そ、そうなんだ……。そうしたら生活費は……」

「家でもできるネットがあるでしょう? 僕、株やFXで蓄えあるし、しーちゃんにちょっと協力して貰えば子育ての合間にモデルのお仕事だって出来るし。もしなんなら、子供服のデザインやってみてもいい。Dangerous Scentにかけあってみる」


 ママタレならぬパパタレを目指すか、ナツよ。


「僕ね、女の子が欲しい。手作りのフリフリのお洋服着せるんだ。勿論パンツも手作り。しーちゃんとお揃い。ああ、きっと……しーちゃんに似て可愛いだろうな……」


 あたしの頭上に顎を乗せている…女子力高いナツが、祭壇の鏡に映っている。

 あたしが泣きたくなるほどの、幸せそうな笑みを浮かべていた。


「名前は……んんっと……フユ、かな」

「なんでフユ?」

「ん……なんとなくだけど、それがぴったりきた。ん、フユに決定」


 あたしはくすりと笑った。


 ハル兄との子供がアキ、ナツとの子供がフユ。

 春夏秋冬……佐伯家に囲まれるなんて、とても賑やかだな。


「しーちゃん……僕ね」

「ん?」

「僕……、きっと波瑠兄としーちゃんとの子供も愛せる」

「え?」

「そして波瑠兄も、きっとそう。僕との子供を愛してくれる……」

「ナツ……?」


 黙り込んだナツに声をかけると、ナツは顔を上げた。

 鏡に映っていたのは、覚悟したようなオトコの顔をしたナツ。


「僕、波瑠兄に負けないオトコになる」



 あたしを抱きしめるナツの手に力が込められた。

  

「しーちゃんに選ばれるオトコになる。

しーちゃんをどきどきさせるような、そんな魅力ある存在に。


それが僕の……今年の決意表明」





 その声音に、既にどきどきしてしまったことは内緒。 




「あれ、決意表明はアワビとマツタケじゃ?」

「それがすべてを表現しているんだ。僕の愛は、ひとことでは表現できないんだよ」


 ナツは、うふふと微笑んだ。

 とても綺麗な、王子様スマイルで。





 ナツ編 Fin.

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