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【SS】目が覚めたら…?
第4章 Ⅲ.??
 


 1月1日――。


 俺はいつも、ナツの家に行くことになっている。


『あけましておめでとう、サクラ今年も家で待ってるよ』


 ナツから電話がきた。


 ナツが家に連れる友達は俺だけらしい。

 そうナツのお母さんに言われた時、体がむず痒くなった。


 ナツの料理は本当においしくて、毎年姉貴達がお土産を期待している。

 それを見越してナツは大量におせちを作るらしい。


 おせちを作れる男……佐伯奈都。

 その原点は、あのひと……静流さんに遡る。


 毎年ナツは大晦日から波瑠さんと病院に行って、目覚めないあのひとと一緒に年を越しておせちを食べる。


 目覚めた今年――ナツはきっと嬉しくてたまらないだろう。

 ナツだけではない。

 波瑠さんだってそうだ。


 ……そして俺も。


 年始めに、あのひとと会えるかも……などと馬鹿みたいに胸をときめかしながら佐伯宅に行ったら、あのひとと波瑠さんは不在で、ナツがどんよりと落込んでいた。


「しーちゃんと波瑠兄、今日帰ってこないかもしれない」


 理由を聞いた。

 あのひとが波瑠さんに抱かれているらしい。

 ……それだけで胸がつきんと痛んだ。


 俺は波瑠さんを尊敬している。

 傍若無人だから誤解されやすいけれど、誰もに慕われる波瑠さん。

 あの圧倒的な存在感とカリスマ性は、年をとっても衰えることなく。


 その波瑠さんがあのひとを想っているということは、ナツより前に俺は知っていた。

 女を冷めた眼差しで見つめる波瑠さんが、あのひとにだけは違うから。

 波瑠さんが、一番似つかわしくない職業を選んだ時、決定的だと思った。
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