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【SS】目が覚めたら…?
第4章 Ⅲ.??


「どうしたの、サクラ?」


 ココア色の瞳が、俺を心配して覗き込んでくる。

 昔からナツはひとの心に聡い。

 聡いのに……俺のあのひとへの気持ちに気づかないのは、俺への信頼感ゆえのこと。だから俺は……ナツとの友情のために、この気持ちをナツに言う気はない。

 俺にとってナツの存在は大きいんだ――。


「なんでもない。……ナツ。体の繋がりだけが愛じゃないぞ?」


 励ましたくなる。

 自分の初恋が叶わぬのなら、せめてナツのだけでも叶えてやりたい。

 
 ナツの中に俺を見る。

 ナツを通してこの恋を成就させたい――。


 それを叶えるためには、波瑠さんを傷つけ、そしてきっと……俺の心もまた、傷つくのだろうけれど。


 ごめんなさい、波瑠さん。

 俺は……ナツを放ってはおけません…。


「だけど……格好いい波瑠兄が、しーちゃんに本気を出してる。それでしーちゃんを普通の恋人のように愛したら、しーちゃんは……」


 ナツは波瑠さんが本気を出し始めた頃から惑っている。

 ナツにとっても波瑠さんは絶対的。

 波瑠さん以上のオトコはいないと思っている。


 だから極度に怯えているのだ。

 あのひとが、波瑠さんを選ぶと。


 だがな、ナツ。お前は気づいていないだけだ。


「それで揺れるようなあのひとなら、波瑠さんも苦労しないと思うぞ?」


 波瑠さんもまた、お前を脅威に思っていることを。

 
「お前はお前らしくいけばいいじゃないか。あのひとが目覚めてからまだ少ししか経っていない。思い続けてきた年月以上が、お前にはある」


 ナツには言えない。

 俺もまた、同じくらいの年月……あのひとの残像を消すことができないとは。

 言えないな、俺には……。

 波瑠さんのように、あのひとを好きだと公言して頑張っている健気なナツに、張り合えるとも思わないから。


「明日……僕、しーちゃんのナカに挿れれるかな……。いや、挿れたいんだ。既成事実をどうしても作りたい。僕は……前に進みたいから」


 ナツの決意したような声に、俺の心が軋んだ音をたてた。
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