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【SS】目が覚めたら…?
第4章 Ⅲ.??
 

「欲しいんですか、あのひととの子供……」


 すると、波瑠さんは自嘲気に笑った。


「欲しいな……。俺、年だからさ……残してやりてぇんだよ。俺が逝っても、俺の代わりにあいつを愛してやる存在を……俺の分身をな」


 それはとても寂しそうな横顔で。


「だけど子供の前に、あいつの心が欲しいけどな……」


 俺の胸が締め付けられる。


 昨日、あのひとを抱いた波瑠さんが、次の日にこんな切なそうな表情をしているのは、きっと今日、あのひとがナツに抱かれるからだろう。


 昨日のナツと同じような翳った顔で、そうして自分以外の相手があのひとを抱くことを許すのか。


 ……俺なら出来ない。

 俺なら、許せない。 


 だけど――。


「はは……。子作りするにはタバコはやめた方がいい。だけど今日だけは、超ヘビースモーカーになること、黙っててくれよ」


 そう笑うと、波瑠さんはタバコをふかした。


 淫魔が目覚めれば、子供が出来にくいと聞いていた。

 淫魔が眠るこうした機会がなければ、あのひとが身籠もる確率は低い。


 わかっていながら波瑠さんは子供を願う。

 そして多分、ナツも――。



 あのひとは幸せ者だ。

 こんなに想われて――。
 

「そうそう、サクラ。俺さ、夢で卑猥の神様ってのが出てきてよ、正月に願いを叶えてやるって言われたんだ」


 波瑠さんからも言われた。


「まさかそれ、おむつした片手サイズのよぼよぼジイサン……ではないですよね」

「どうしたんだ、お前?」


 ……やはり違うか。


「なにを願ったんですか?」


 もう想像はついている。


「……淫魔抜きに、ゆっくりとシズを愛してぇってな」

「叶いましたね」


 俺は、うまく微笑んでいられてるだろうか。



「だけど、おかしなことを言われて。"ならば元旦は長男、2日目は次男。その願いを叶えてやろう。その子羊の願いは……一番最後に"って。

俺以外にもその神様の言葉を聞いたのかな。ナツの願いはわかる。だがシズはどうだろう。なんだか俺……すげぇ、明日が不安なんだ。あいつ……絶対、こっちの思い通りに動く女じゃねぇから」

「似たようなものだと思いますよ、彼女もきっと」


 俺は笑って、お守りを揺らした。



「御利益がありますように」




 
 

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