この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
衝動[完]
第5章 思い
「せんせ……。」
「見れば解るでしょ?今取り込み中だから。」
祐は弥生に一瞥もくれず、受話器を取った。
「うん、待ってるよ。」
「待ってたって駄目。もう休み時間終わるよ。教室に戻りなさい。」
アドレス帳を見ながら電話をかける。
弥生は寒気に震えながら言葉を続ける。
「でも……あのね……せんせ……。」
「弥生。これはオレの仕事だから。邪魔しないでね。」
「邪魔?……私……祐先生の邪魔してたの…?」
「あ、もしもし?」
祐は電話口に出た相手と話しながら振り返り、漸く弥生を見た。
眉をひそめる。
一礼して出て行く弥生のその顔はいつものような生気が無く、青白く辛そうに歪められていた。
「ちょ、ちょっと待って下さい。すみません。」
そう告げると、受話器に手を当て廊下に向かって叫んだ。
「弥生!弥生!!ちょっと待て!!」
けれどその声は弥生には届かず、祐は舌打ちをすると再び受話器を耳に当てた。